炎上のトレンド広報担当者も知っておきたい有価証券報告書の「事業等リスク」
2021.10.01
「コロナ後の企業変革」という特集で、SDGsやESG投資など社会課題解決に向けた企業の役割が大きくなる中で、あなたの会社が考えるリスクと課題やその取り組みについてトップインタビューしたいという趣旨です。社長からはQAを作っておくように指示されました。
ここは広報として手腕の見せどころです。
もしあなたが担当者だったら、どんなQA(想定質疑応答)を用意しますか?
こんな時、有価証券報告書の中に記載がある「事業等リスク」などが参考になります。
非財務情報の「事業等リスク」
「コロナなど企業をとりまく外部環境変化について、どのようにお考えですか?」
「ステークホルダーの価値観の変化を感じますか?」
「今求められている社会課題に対し、会社としてどのような対応を考えていますか?」
「今後の事業戦略についてお聞かせください」
など取材ではさまざまな質問が想定されます。広報がこのような経営トップのスポークスパーソンとしての役割が求められている場合、企業全体の経営戦略や方向性への理解が必要になります。
有価証券報告書と聞くと投資家に向けた財務情報で、IRの資料というイメージを持つ方も多いと思いますが「事業等リスク」には、会社が対処すべきリスクや社会課題への対応といった「非財務情報」も記載されています。
実は「事業等リスク」の内容は、2020年3月からより具体的に詳細を記載するよう求められるようになり、これにより各社が開示する有価証券報告書の内容が充実するようになりました。
金融庁が今年2月公開した「事業等のリスク」好事例集2020にはコニカミノルタや味の素などをはじめとする11社の開示例がGood Practiceとして紹介されています。この中で、各社の経営者が考えているリスクの発生可能性や影響、各リスクについての具体的対応策、リスクのマイナス面のみではなく、プラス面も含めた影響を記載している法人もありました。
また、有価証券報告書【経営方針、経営環境及び対処すべき課題】という項目でもGood Practiceが紹介され、「サステナビリティ経営/ESGの進化」
を経営戦略の中にどのように位置づけてるか具体的に紹介している例もありました。
3.「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の開示例
高次元なコミュニケーションが行える広報人材
このように、冒頭で仮定した取材があったときなど、他社の有価証券報告書から広報が参考にできる要素はたくさんあることが分かります。
実際に私自身、新型コロナウイルス感染症の取り組みなどでクライアントが持つコミュニケーション課題に対し、「事業等リスク」などから他社はどのようなスタンスで、どんな取り組みを行なっているか具体的な事例を紹介しながらサポートできるのでとても役立てています。もちろん記者の方から質問があった時も、こうした市場の動向や他社事例の紹介ができます。
広報とIRは別部署で、連携をとっていないという会社も多いと思いますが、企業の外部環境変化は、担当者の対応いかんでは「機会」にも「リスク」にもなるものです。
日本の企業を取り巻く環境は大きく変わりました。
企業内外にアンテナを張り、期待値やリスクについての情報をキャッチできるようになると、有事の時にもステークホルダーにちゃんとした説明ができる高次元なコミュニケーションが行える広報人材として重宝されるようになるでしょう。
そのような視点で広報業務に取り組むと、他のどれにもない働き甲斐を得られるかもしれません。
(執筆者:代表理事 大杉春子)
日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)では、企業をレピュテーションリスクから守る人材の育成を行っています。
専任カウンセラーによる無料相談も行っておりますので、まずは気軽にお問い合わせください。
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