一般社団法人 日本リスクコミュニケーション協会 Risk Communication Institute of JAPAN

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用語リスクコミュニケーションとは

2022.06.01

「リスクコミュニケーションって結局なんですか?」「どうしたらリスクコミュニケーションを実践しているということになるんですか?」といった質問を受けることがよくあります。

今回は、今一度リスクコミュニケーションを初心に戻って解説し、「リスクコミュニケーションとは」という質問にじっくりお答えします。

リスクコミュニケーションの定義

 

リスクコミュニケーションとは。その定義。

 

リスクコミュニケーションの統一基準はない

 

リスクコミュニケーションとは。最近よく耳にする「リスクコミュニケーション」ですが、実は経済産業省をはじめ各官庁ではさまざまな定義がなされており、リスクコミュニケーションという言葉の国内で統一した基準がありません。

一部では、有事が「クライシス・コミュニケーション(危機管理広報)」、平時が「リスクコミュニケーション」と分けて論ずる専門家の方もいます。しかし、実践の場において、有事と平時の対応はグラデーションしており、これを明確に分けることは難しいものです。このことは、米国CDCによるCERC(サーク)の原則や行動戦略からも読み取れます。

9・11以降、米国疾病予防管理センター(CDC)は、有事におけるコミュニケーションには、心理学やコミュニケーション科学、マネジメント分野の知識などがなければ対応できないと強く感じ、コミュニケーションの学問分野のエビデンスなどに基づき「クライシス・緊急事態リスクコミュニケーション(Crisis and Emergency Risk Communication:CERC)」(通称:サーク)を開発。

つまり、「リスクコミュニケーションとは」をひとことで言い表すことは難しいのです。

リスクコミュニケーションという言葉の意味の広さ、柔軟さに、雲を掴むような話に感じられる方もいるかもしれません。そこで、日々変わる情勢に応じたリスクコミュニケーションの正しい道を示すのが、私たち日本リスクコミュニケーション協会の使命と心得ています。

 

日本リスクコミュニケーション協会が提唱する定義

 

日本リスクコミュニケーション協会では、「リスクコミュニケーション」を次のように定義しています。

 

有事の際に、内外のステークホルダーと適切なコミュニケーションを図ること。

これを迅速に進めるため、平時より準備を進めること。

 

まずは「リスクコミュニケーションとは」を追究することで迷い悩んでしまった方々に、覚えて頂きたい定義です。

ここで理解していただきたいのは、平時と有事…つまり常に様々なリスクにさらされている組織を守るために、コミュニケーションを意識する必要があるということです。

 

リスクコミュニケーションとは

 

大事なのは定義ではなく本質への理解と実践

 

リスクから組織を守る。つまり、リスクを最小化するという目的では、昨今では主に以下のようなケースがあります。

  • 震災やパンデミックなどに見舞われた時、適切なコミュニケーションにより被害を最小化する。
  • 不祥事の発覚や、SNSの炎上時など、マルチステークホルダーと適切なコミュニケーションをとり、レピュテーション(評判)リスクを最小化する。

上記のような様々なリスクを最小化するためにはどうすればいいのでしょうか。備えがない状態でいきなり有事となったら対応のしようがありません。

平時から円滑なコミュニケーション戦略を行い、有事の時にはそのコミュニケーションを最大限発揮することでリスクを最小化する。それを実践するのが「リスクコミュニケーション」です。

 

経営にリスクコミュニケーションが欠かせなくなった背景とは?

 

リスクコミュニケーションで負のスパイラルを防ぐ

 

些事が一瞬で大事になり評価が暴落するのが今の時代

 

では今なぜ「リスクコミュニケーション」が必要なのでしょうか?

多様性が進む現代社会において、些細なことが発端となり、 株価下落や業績悪化に至るなど最悪の事態に発展するケースは珍しくありません。影響を見誤り、対応が後手にまわれば、多方面のステークホルダーから糾弾され、大きくレピュテーションを損なう可能性があります。

 

負のスパイラルから抜け出すためのリスクコミュニケーション

 

企業不祥事の本質はレピュテーション・リスクにあります。

レピュテーションが失墜すると株価が下がり、不祥事に厳しい機関投資家などが離れます。株価の低迷が長期化し、消費者のイメージが悪化して顧客離れにより売上が落ちます。取引先の信用も失われます。経営陣に対する信頼感が低下し、働く従業員意欲が失われ生産性も落ちてきます。さらに優秀な学生や人材から就職先として敬遠されていくという、負のスパイラルに陥るからです。

さらに近年、ソーシャルメディアなどの普及によって、コミュニケーションチャネルが多様化する中、企業とステークホルダー間の双方向コミュニケーションが求められています。

消費者を中心としたマーケティングと、レピュテーションコントロールの重要性が叫ばれるようになり、コンテンツのパーソナライズなど、加速度的に進化と適応が迫られています

 

管理職や広報に課されるリスクコミュニケーション

 

このような中、「リスクコミュニケーション」を担う管理職や各部門(広報やマーケティング)に託される役割はますます多くなっています。認知拡大はもとより、危機管理広報や非財務情報の拡充、内外のマルチステークホルダーとのコミュニケーションにまで及び、昨今はソーシャルメディアや社会課題であるSDGsへの配慮も求められるようになりました。

想定外の危機を迎えた時、リスク管理の視点から組織がどのような新たなリスクにさらされているか、またそのリスクを回避するため、ステークホルダーとどのようなコミュニケーションを行えばいいか、対応と予防の両軸から施策が迫られている現代において「リスクコミュニケーション」は経営に欠かせない要素になったといえます。

 

リスクコミュニケーターの役割

 

リスクコミュニケーター

 

リスクコミュニケーターの重要性

 

リスクコミュニケーションの役割を担う担当者やチームを「リスクコミュニケーター」といいます。「リスクコミュニケーションとは」と考え、調べ、理解を深めようとしているあなた自身が、すでにリスクコミュニケーターの入り口に立っているのではないでしょうか。

「リスクコミュニケーター」は平時と有事それぞれにおいて、リスクの可視化と対策を軸に各専門領域のセクションや人材とコミュニケーションをはかり、広い視野で会社や組織の《危機に対する万全の状態》を実現・維持する役割をになっています。

 

平時におけるリスクコミュニケーターの役割

 

リスクコミュニケーターは平時において、経営に関する各専門分野の知識を広く習得し、事前準備とマネジメントを実行します。具体的には以下のような取り組みを行います。

  •  時代の流れを察知し、リスクのトレンドや傾向を把握
  •  各ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションを図る
  •  緊急時チーム構築、対応マニュアルの作成
  •  BCP(事業継続計画)やBCM(事業継続管理)の理解
  •  社内連携部署との信頼関係を構築
  •  専門家チームとネットワークを構築
  •  社内勉強会、トレーニングを行う

 

有事におけるリスクコミュニケーターの役割

 

そして、有事には、タイムマネジメントを意識しながら対応し、各ステークホルダーに対して適切なコミュニケーションをとり、以下のような役割を担います。

  •  BCM(事業継続管理)の発動
  •  内部での情報収集と意思決定
  •  危機管理広報の実施(緊急記者会見など)
  •  内外への情報共有と発信
  •  専門家とエキスパートとの連携と活用

 

リスクコミュニケーションがもたらす効果

組織で安心して働ける環境が整う

 

リスクコミュニケーションは企業価値の向上に大きく貢献します。リスクコミュニケーションに先立ち、組織内のリスクマネジメント体制を整備し、実際に機能させることが必要になります。

リスクコミュニケションができている職場ではリスク管理がされていて、社員が不安に悩まされることなく「心理的安全性」が担保されています。彼らはリスクを積極的に取ろうとするし、実際に何かあればどのように対応するか理解しています。トラブルが迅速に報告され、すぐさま対応が行われ、部署を超えた団結が可能になります。

 

危機対応の出来が株価を守る

 

そして、リスクコミュニケーションは企業の株価にも影響を及ぼします

イギリスのリスクマネジメント系のリサーチ会社が、2000年からの約20年間にわたって、危機に見舞われた企業の対策状況や被害状況の調査を行い、リスクマネジメントなどの事前の取り組みが企業に与える付加価値について分析・評価した結果をまとめました。

 

リスクコミュニケーションとは。株価に与える影響。

出典:Pentland Analytic社「リスクマネジメントと企業価値の関係性に関する報告書」(Risk, Reputation and Accountability A GOVERNANCE PERSPECTIVE OF DISRUPTIVE EVENTS)

この報告書によれば、危機に直面した企業は翌年以降、ほとんど5%株価を下げています。また、2020年の調査では、危機に直面した後であるにもかかわらず株価を上げた企業は、危機発生後1年の間に市場期待値より20%上回ったという結果が出ています。

逆に株価を下げた企業は、30%下回りました。つまり、企業の危機対応の出来・不出来がその後の企業価値(株価)の明暗をはっきりと分けていることが示唆される結果となりました。

 

SDGsへの取り組みなどの社会価値を高める

 

またSDGs/ESGが企業価値として認知されるようになった現代において、環境問題等をリスクととらえ、企業が社会課題に向き合う姿勢を訴求して自らの社会価値を高めることは、リスクを低減するだけでなく、新たな価値の創出に繋がっていきます。

 

リスクコミュニケーションとは。そのまとめ

 

・日本リスクコミュニケーション協会は”有事の際に、内外のステークホルダーと適切なコミュニケーションを図ること。これを迅速に進めるため、平時より準備を進めること。”と定義している。
・些事が一瞬で大事になり評価が暴落するのが今の時代、経営にはリスクコミュニケーションが欠かせなくなった。
・「リスクコミュニケーター」は平時と有事それぞれにおいて、組織の《危機に対する万全の状態》を実現・維持する役割をになっている。
・リスクコミュニケーションは企業価値の向上につながり、実践できている組織は、社員の「心理的安全性」が確保される。

 

このように、リスクコミュニケーションとは、統一基準はありませんが、平時有事問わず様々な局面で必要なことであるとお分かりいただけたかと思われます。

そのために必要なリスクコミュニケーター、また、その効果を知ることで、リスクコミュニケーションの理解が深めていただけたのではないでしょうか。

さまざまな観点から、リスクコミュニケーションへの取り組みは企業や組織の価値維持・向上を実現するために非常に重要であることが読み取れ、今後もその重要性が裏付けられる機会は増えていくと想定されます。

リスクコミュニケーションについてもう少し深く知り、実践していきたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。様々な分野のスペシャリストが、的確なアドバイスをいたします。

 

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