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コミュニケーション戦略高まる地政学リスクに対応する日本企業のグローバル戦略 〜サプライチェーン再編と効果的コミュニケーションの重要性〜

2025.03.28

高まる地政学リスクに対応する日本企業のグローバル戦略
〜サプライチェーン再編と効果的コミュニケーションの重要性〜

米中対立、ロシア・ウクライナ紛争、中東情勢の不安定化…。こうした地政学リスクの高まりは、日本企業のグローバル戦略にも大きな影響を与えています。

日本貿易振興機構(JETRO)が3月に発表した「2024年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」から、日本企業の最新動向が見えてきました。

本記事では、地政学リスクへの対応、サプライチェーンの再構築、人権・環境への配慮、多様な人材の活用に焦点を当て、企業がステークホルダーに対して適切かつ効果的な情報発信を行うための知見を提供します。

日本企業の海外戦略、今どこに向かっているのか?

JETROの調査によると、海外市場の重要性は依然として高く、日本企業の多くが海外事業の拡大を計画しています。特筆すべきは、米国が最も重視される輸出先として躍進していることで、中国との差が拡大しています。またASEAN地域も引き続き重要な位置を占めています。

調査では、海外拠点をすでに持つ企業の約半数が「さらに拡大を図る」と回答しており、海外展開への積極姿勢が見られます。事業拡大先としては、米国が引き続き首位を維持する一方、大企業ではインドへの注目度も高まっています。

一方で、対中国ビジネスの方針は二極化しており、拡充する企業がある一方で、地政学リスクの高まりなどを理由に縮小・撤退を検討する企業も存在します。この状況は、各企業がリスクと機会を慎重に評価した上で、戦略的な意思決定を行っていることを示しています。

地政学リスクとサプライチェーンの再構築

地政学的緊張の高まりは、サプライチェーンに大きな影響を与えています。調査によれば、約7割の企業が海外からの主要原材料・部品の調達に影響を懸念しており、特にEUや米国からの調達において影響が大きい傾向が見られます。

このリスクに対応するため、多くの企業が調達先の分散・多元化を進めています。具体的には、単一の国や地域に依存せず、複数の調達先を確保する取り組みが広がっています。例えば、電子部品メーカーA社は、従来中国に集中していた部品調達先を、ベトナムやインドネシアなどASEAN諸国に分散させることで、地政学リスクの軽減に成功しています。

このようなサプライチェーン再編の取り組みとその進捗を透明性高く伝えることは、投資家や取引先などのステークホルダーからの信頼獲得につながります。企業は単にリスク対応を行うだけでなく、その取り組みを積極的に発信することで、企業価値の向上につなげることができます。

サステナビリティと人権への取り組み強化

グローバル市場での競争力維持には、サステナビリティと人権尊重への取り組みが不可欠となっています。調査によれば、サステナビリティ関連情報の開示に取り組む企業が増加しており、特に大企業では7割以上が情報開示を実施済みまたは予定しています。

特に注目すべきは、人権尊重に関する取り組みの進展です。人権尊重方針を策定する企業や、人権デューディリジェンス(DD)を実施する企業が大幅に増加しています。人権DD実施の主な理由として「人権尊重は企業の責任と認識している」という回答が最も多く、企業の社会的責任への意識の高まりが見られます。

例えば、アパレルメーカーB社は、サプライチェーン全体での人権リスク評価を実施し、その結果を踏まえた改善計画を策定・開示することで、国際的な評価機関からの高い評価を獲得しています。

また、循環型経済への意識も高まっており、約7割の企業が商品の仕様変更や包装材の変更、使用済み品の回収・リサイクルなどに取り組んでいます。食品メーカーC社は、プラスチック使用量を30%削減する包装材に切り替え、その取り組みを環境報告書で詳細に開示することで、環境意識の高い消費者からの支持を獲得しています。

多様な人材の活用と組織の国際化

グローバル展開を進める日本企業にとって、多様な人材の活用は重要な課題となっています。調査によれば、外国人材を雇用する企業の割合は増加傾向にあり、特に高度外国人材の雇用が拡大しています。

高度外国人材の雇用は、海外展開への貢献や多様な企業風土の醸成につながると認識されていますが、課題も存在します。「外国語対応が難しい」「採用活動に必要なノウハウ・知見が不足」といった点が、外国人材の採用・雇用における主な障壁として挙げられています。

こうした課題に対応するため、IT企業D社は社内公用語を英語化し、外国人社員向けのメンター制度を導入するなど、包括的な組織改革を実施しています。同社は、これらの取り組みと成果を定期的に公開することで、グローバル人材の採用競争で優位性を確立しています。

効果的なコミュニケーション戦略の重要性

上記の取り組みを進める中で、内外のステークホルダーに対して適切かつ効果的な情報発信を行うことの重要性が高まっています。特に以下の点について、戦略的なコミュニケーションが求められます。

①地政学リスク対応の透明な開示
サプライチェーン再編の進捗状況や、地政学リスク評価の枠組みなど、企業のリスク管理体制について積極的に情報発信することで、投資家の信頼を獲得できます。

②サステナビリティ情報の体系的な開示
人権・環境への配慮に関する具体的な取り組みや目標、進捗状況を体系的に開示することで、ESG投資家や環境意識の高い消費者からの支持を獲得できます。

③多様な人材の活用事例の発信
外国人材の活躍事例や、ダイバーシティ推進の取り組みを発信することで、グローバル人材の採用や海外ステークホルダーとの関係構築に寄与します。

④デジタルチャネルの戦略的活用
調査によれば、海外向け販売でのEC活用に関心が高く、約4割の企業がEC利用経験があります。こうしたデジタルチャネルを活用した情報発信も重要性を増しています。


まとめ

地政学リスクへの対応、サプライチェーンの再構築、環境・人権への配慮、人材の多様化——。これらの取り組みを「やっている」だけでは不十分です。効果的に「伝える」ことで、初めて企業価値に結びつきます。

JETRO調査が示すように、地政学リスクの高まりを受け、日本企業は様々な対応を進めています。それらを効果的に発信することで、企業の評判向上と競争力強化につなげることができるのです。

世界情勢が不安定だからこそ、リスクへの備えと透明性の高いコミュニケーションが重要になっています。

企業を取り巻くリスクは日々複雑化しています。本記事で取り上げた地政学リスクは、現代企業が直面する多くのリスク要因の一つに過ぎません。

日本リスクコミュニケーション協会では、自然災害、地政学リスク、ITリスク、SNS運用上のリスク、レピュテーションリスクという現代社会が直面している主要なリスク分野を全て網羅した包括的なカリキュラムを提供しています。

企業のリスクコミュニケーション担当者が、様々なリスク要因を適切に評価し、効果的に情報発信するためのノウハウを習得できるプログラムとなっています。

不確実性の高い時代だからこそ、リスクを理解し、適切にコミュニケーションする能力が企業価値を左右します。貴社のリスクコミュニケーション力強化に、ぜひ当協会のカリキュラムをご活用ください。

 

参照情報:2024年度ジェトロ海外ビジネス調査日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査

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