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RCの基礎知識#01 リスクコミュニケーション・アドバイザーの役割 ー「リスクコミュニケーション・アドバイザー」への道

2021.11.17

RCIJは設立以来、日本が世界一の危機管理先進国となる環境を目指して、「リスクコミュニケーションのエキスパート」の育成と輩出に取り組んできました。

近年、次々と不測の事態が発生する中、組織内外に適切なコミュニケーションを図り、情報を司る専門家の需要が高まっています。

企業や組織の価値はマルチステークホルダーからのレピュテーションの集積です。
レピュテーションが失墜すると株価が下がり、消費者のイメージが悪化して顧客離れにより売上が落ちます。取引先の信用が失われ、経営陣に対する信頼感が低下し、働く従業員意欲が失われ生産性も落ちてきます。さらに優秀な学生や人材から就職先として敬遠されていくという、負のスパイラルに陥ります。そのため企業や組織は平時に加えて、有事のコミュニケーションスキルを高めることが求められています。

さらにグローバル視点では、SDGs/ESGをはじめ、BLM運動やコロナウィルスの流行など、さまざまな社会問題に対して企業がどんなスタンスを取るのか表明し、行動することが生活者より求められています。実際に多くの海外企業はこれらに対応するため、事前に用意されたコミュニケーション戦略によりスピーディに対応しています。
このような潮流は、SNSの普及により驚異的な情報伝達のスピードにより加速しており、今後日本でも広がりをみせていくと考えられます。

しかし、有事のコミュニケーションを適切に実現するためには、エンタープライズ(全社的)なリスク・マネジメントやコミュニケーション科学、緊急事態に対応した過去の学びなどの知識がなければ太刀打ちできません。

今回から数回にわたり、実際に「リスクコミュニケーション・アドバイザー」として独り立ちを希望する方々を対象として、RCIJに所属する専門家ら独自のノウハウや心掛けていることなどを、実践視点からお伝えしていきたいと思います。

リスクコミュニケーション・アドバイザーの立ち位置

アドバイザーは、コミュニケーション戦略における適切なリスク管理が出来るよう、外部からステークホルダーの代弁者としての立場から、経営陣に「マルチステークホルダー目線を意識させる」役割を担います。そのために、事業者が実現したい状態の確認と可視化を行い、経営陣と現場の巻き込みによって実現する必要があります。
アドバイザーは、時にはその主たる担い手として施策を推進し、時には事業者の中での担い手を育成していくために手本を示し、助言・指導を行い、時には適切に展開されているかを豊富な知見から調査・評価すること、また日々変化する企業を取り巻くリスクトレンドの潮流をキャッチすることが求められます。

事業者によってパーパスやフィロソフィーなど多種多様のため、自らが担い手となるよりも、アドバイザリーを通じて、変化を促していくことのほうがより高度なけん引力が必要となるケースがあります。
また状況に応じて、事業者のメンバーが、それぞれの役割を果たせるように支援することが求められます。アドバイザーは、事業者の現況や要望を認識・理解し、事業者を構成するメンバー、そして自分自身に対しても責任を果たしていくことが重要なポイントになります。

事業者に対して
100の事業者には100通り以上の方法が存在します。事業者には決まったやり方は1つではなく、適切な位置取り(ポジショニング)を見出し、導くことが重要な役割となります。また、事業者のメンバーの知識を豊富にして、困難を突破する技術を向上し、その心構えを修正することができるよう援助することが求められます。これはメンバー自身の自己啓発と業務能力の向上、事業者の躍動的な変化を促すものとなります。この場合アドバイザーは、いわば「トレーナー」として役割を果たしていきます。

自分自身に対して
アドバイザーは、自分自身も絶えずスキルと技能を向上させる責任があります。さらにメンバー各々の求められている役割に対して、適切に能力を発揮しているかを見極めて、適正に訓練されるよう配慮する責任も持ちます。関係者との緊密なコミュニケーションを保つことが、総合的な支援・指導に有効性を達成することと、信頼関係に繋がります。

リスクコミュニケーション・アドバイザーの役割
以下の5つの立場から、アドバイザーとしての役割を展開します。

①スポークスパーソンらの代弁者として
組織の代表者は、自らの意志を周囲にうまく伝えられていないことがあります。この場合、内外のマルチステークホルダーに対して、意味をかみ砕いて組織の意志として、伝えていくことが求められます。また、組織内のメンバーも課題解決に有効な手立てや意見を持っていながら、様々な状況から組織内で立場が軽視されていたりして、発言が採用されない場合があります。この場合には第三者でありながら、経営陣にとって有益な助言者、いわば参謀として意見を聞き入れられる立場を活用して、そうした意見を代弁して伝えていく必要があります。

②始動者として
新しい挑戦を促すために、事業の目的を説明したり、他の動向を含めて情報を提供したり、動機づけをして促しながら、正しくテイクリスク出来るように仕向けます。
現状を見つめ、課題点を指摘し、メンバーが変化の必要性を自覚するように援助しながら、課題解決のプロセスを次に進めていくようにサポートすることが必要です。これによりメンバーは自らの状況を分析し、必要な取り組みについて気づくことができます。

③啓蒙者として
アドバイザーは、チームが必要とされる知識を得られるような状況をつくり、時には自ら研修を主導して、必要なことを得る場と環境を用意する役割があります。必要な情報提供と適切なサポートを行うことが事業者の問題を明確にし、解決することに繋がります。

④解決策提供者として
他社のグットプラクティス、バッドプラクティスなど数多く事例触れて、「引き出し」を多くしていくことが事業者のサポートに繋がりますが、有効な解決策提供者であるためには、ただ単に数多くの事例を知っているだけでは不十分です。事業者の状況を見極め、置かれている状況に適切な解決のプロセスを描いた上で、それらがもたらす効果について配慮しながら、正しい方法を選択します。特に有事の際は、限られた状況下で、個別のリスクイベントとステークホルダーへの対応は、俯瞰的な視点からメリット・デメリット分析を行い、優先順位を判断し効果を確実に発揮させる必要があります。

⑤コネクターとして
リスクコミュニケーション・アドバイザーは、コネクターとして必要としているところに資源をつなぐ役割も求められています。資源とは人的ネットワークの他、資料、事例、学習の機会などを含みます。繋がりとして知り合いが多くいるだけでなく、技能・経験・知見・ノウハウ・情報などを持つ、また期待できる活きたネットワークを持つこと。そのためには自身の有益性を提供することも、強固な繋がりを維持することに繋がります。

これら5つの役割を実現するために、リスクコミュニケーション・アドバイザーは日々自分自身のスキルに磨きをかけていくことが求められています。

(執筆者:代表理事 大杉春子)

日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)では、「リスクコミュニケーション・アドバイザー」の育成を行っています。
専任カウンセラーによる無料相談も行っておりますので、まずは気軽にお問い合わせください
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