コミュニケーション戦略広報担当者が考えるべき「物流の2024年問題」への対策とガイドラインの活用法
2023.06.15
6月2日、経済産業省、農林水産省、国土交通省の三省が協力し、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を公表しました。
これは急速に迫り来る「物流の2024年問題」への対策として、業界全体が早急に取り組むべき事項を示したものです。
参照元:経済産業省_『物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン』
「物流の2024年問題」とは?
物流業界では長年、人手不足が深刻な課題となっています。
2024年4月から、労働者の過重な労働を抑制する目的で、トラックドライバーの時間外労働の規制が強化される予定です。その結果、物流業界では輸送能力が不足し、企業間の物資の流れが滞り、結果として経済活動全体に影響を及ぼす可能性が懸念されているのです。
こうした事態に対応するために、ガイドラインでは荷主事業者に対して、荷物の積み降ろしの順番を待つ「荷待ち」時間の短縮に努めることなどが求められています。
「物流の2024年問題」から考えるリスク
時間外労働の規制強化により、人手不足がさらに深刻化すると予想される物流業界。
その影響は、荷主事業者から物流事業者まで、企業全体に及びます。例えば、輸送能力の不足は、遅延や荷物の納期遅れを招き、顧客満足度の低下や売上減少につながる可能性があります。
運送能力の不足は競争を激化させ、物流コストの増加を引き起こす可能性もあります。
これらは企業の経営に大きな影響を及ぼし、特に物流に依存する事業を展開している企業にとっては深刻なリスクとなります。
今回公開されたガイドラインの概要
ガイドラインでは、荷主事業者であるメーカーや卸売り業者、小売り業者に対し、荷待ち時間や荷役作業などにかかる時間を把握し、それを合計2時間以内とするよう求めています。既に2時間以内となっている場合は、さらなる努力を求め、目標時間を1時間以内に短縮するよう指導しています。
さらに、荷主事業者は物流事業者に対し、長時間の荷待ちや運送契約にない荷役作業を要求してはならないとしています。これは物流業者に不必要な負担をかける商慣行を改め、物流業界全体の健全化を図ることを目指しています。
また、運送契約の締結において、運送の対価である「運賃」と運送以外の役務の対価である「料金」を別建てで契約することを原則としています。これにより、双方の業務の内容と対価が明確化され、不公平な取引が防がれることが期待されます。
広報担当者が出来るガイドラインを活用した対策
では、企業のコミュニケーション担当者は、これらのガイドラインを具体的にどのように活用し、2024年問題に対処するべきでしょうか?
広報やIR担当者は、自社の物流状況を詳細に把握し、ステークホルダーへのコミュニケーションを通じて問題への理解と対策の進行状況を共有することが求められます。また、改革の取り組みはCSR活動の一環としても評価され、企業価値の向上に寄与する可能性があります。
具体的には、以下のような対策が有用と考えられます。
1. データ分析と報告
物流のデータを収集し、分析することで、問題点や効率化の余地が見えてきます。データは荷物の積み降ろし時間、運送契約の詳細、荷役作業時間等を含むことが望ましいです。分析結果は内部ステークホルダー(経営陣、物流部門など)だけでなく、投資家や顧客にも共有すると良いでしょう。
2. プロセス改善の実施と共有
分析に基づいてプロセス改善を進め、その進捗状況や成果を定期的に共有します。これは、社内外のステークホルダーに向けての報告と同時に、自社の改善への取り組みを明確に示すためのものです。
3. パートナーシップの強化
物流事業者との良好な関係は重要です。効率的なコミュニケーションと協調作業を通じて、互いに利益をもたらすパートナーシップを強化します。この取り組みもまた、広報活動の一部として共有することができます。
4. 社内教育の推進
物流の重要性と物流の2024年問題への対策を理解するための社内教育を推進します。社員全体が問題意識を持ち、解決に向けて行動することが、組織全体の改善に繋がります。
5. ESG投資の視点からの報告
物流問題は環境、社会、ガバナンス(ESG)の観点からも重要です。適切な物流管理は環境負荷の軽減に繋がり、社会としても働き方改革に寄与します。これらの視点から物流問題への取り組みを報告することで、ESG投資家からの評価を高めることができます。
物流の2024年問題は、業務改善の機会でもあります。広報/IR担当者は、物流問題への理解を深め、これらの対策を進めることで、自社の価値を高め、ステークホルダーとの信頼関係を強化することができます。ガイドラインを活用し、物流の問題を解決することで、経営の効率化と持続可能な成長を実現しましょう。
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